研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続いて,振り子状の台に2台のメトロノーム(自励振動子)が固定された全体結合振動子系に発生する自己同期現象について実験と解析の両面から検討を行った.まず,両振動子の固定台上での自励振動数(非線形固有振動数)と台の固有振動数との大小関係が自己同期解の存在領域に与える影響について調べた.その結果,振動子間の位相差が同位相となる安定同期解は同期振動数が台の固有振動数よりも大きい領域に存在し,位相差が逆位相となる安定同期解は同期振動数が台の固有振動数よりも小さい領域に存在した.また,どちらの解も同期振動数が振動子の非線形固有振動数の平均値に近い値となり,台の固有振動数に近いほど解の存在領域が広く現れた.これは,台の共振点付近では振動子間の相互作用の影響が大きくなり同期が起こりやすくなるためであり,発生する同期パターンも共振点前後の振動モードに依存していると考えられる. 次に,局所結合振動子系のモデルとして,DCモータによって回転するおもりを搭載した二つのブロック(質点)をばねで連結した実験装置を製作した.この装置では,モータに印加する電圧に応じて両モータが同期回転する現象が発生する.全体結合振動子系の場合と同様に,両モータの回転数と質点ばね系の固有振動数との大小関係が自己同期解の存在領域に与える影響について調べた,その結果,モータ間の位相差が同位相となる安定同期解は同期振動数が質点ばね系の固有振動数よりも大きい領域に存在し,位相差が逆位相となる安定同期解は同期振動数が質点ばね系の固有振動数よりも小さい領域に存在した.このように,安定同期解の存在領域や同期パターンに系のモード特性が関与している点は2つのモデルで共通しており,自己同期現象の本質の一つであるといえる.
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