研究概要 |
本研究では,上部構造と基礎との間に設けられる免震層に,磁性流体を利用した新しい機能性流体である自在凝固流体(FFF)を適用することにより,簡便な構造で高性能な免震システムの提案を行った.また,提案したシステムの有用性を調べるため,小型モデルによる実験を行い免震装置としての基本性能(絶縁性能,復元性能,減衰性能,支持性能,保持性能)の実現法について検討を行った. 【研究方法および結果】 提案したシステムの小型実験モデルを製作し,各種実験によりFFFの基本性能を調査した.調査法としては,基礎が振動している状態において上部構造に伝達する最大加速度を測定する動的実験,および,静止状態での保持力を測定する静的実験などにより,印加する磁場の大きさ(電磁コイルに印加する電流の大きさ)とFFFの降伏せん断力の関係などを詳細に調査した.各種の実験結果から,以下のような結論を得た. (1)絶縁性能,減衰性能は,FFFの物性から,実現可能であることを立証した. (2)支持機能もFFFのスペーサ粒子により十分に備えていることを確認した. (3)保持機能については,振動基礎の加速度および上部構造の質量に依存するものの,ある一定値以上の電流を印加することによって実現されることを確認した. (4)復元性能については,基礎の振動に対して,絶縁機能と保持機能(印加電流)を連続的に制御することによって実現した. 以上のように,本研究で提案した免震装置によって,免震装置に求められるすべての機能を,非常に小型,簡便かつ安価なシステムによって同時に実現することを可能とした. 本研究では,小型モデルによる検討を行った.この装置により,微振動を嫌う半導体製造施設や美術品展示ケースなどのように,比較的小型の構造物の免震に対して,実用的な装置を提供することができると考えられる.今後は,一般住宅や低層ビルなど大型構造物に対する適用も検討したい.
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