研究概要 |
今年度はまず,昨年度問題となった,アクリル製防音壁の剛性の低さと,研究室の壁面からの反射音の影響を改善すべく,防音壁の支柱の補強をし,また,主として防音壁端部及び上部に吸音材を設置した.これにより,低周波域での制御時の不安定さの改善と,適応制御時の収束を早める事に成功した.今年度の目標は,移動騒音源に対する適応制御系設計の検討であるため,騒音源であるスピーカボックスに駆動部を付加した.更に,防音壁面に振動検出用の圧電素子を複数枚追加貼付し,防音壁を透過する騒音制御時の,参照信号取得位置を変更できる様にした.加えて,検討中のフィードフォワード適応制御で最も問題となる,防音壁面の振動をモニタするために,レーザ変位計を設置した. 以上のハードウェア面での改良を元に,昨年度充分効果を上げる事ができなかった適応制御系の再設計を試みた.まず.壁面に貼付した圧電素子をセンサとして用い,その出力信号を最小化するアルゴリズムを構築後,防音壁の遮音効果をマイクロホンで測定した.結果,圧電センサ信号は60〜150Hzの周波数帯域で約10dB程低減されたものの,防音壁面から放射される騒音レベルはほとんど変化が無かった.次に,防音壁外側に設置したマイク信号を最小化するよう設計した制御系では,制御系に組み込んだマイク信号は,100〜1kHzの広帯域で5〜10dBの低減効果があったのに加え,制御効果の評価用として別の場所に設置したマイク信号も,400〜800Hz付近で10dB程度の低減が見られた.これは,2001年機構論で報告した,長方形の断面を持つ金属製ダクト内を伝わる,一次元騒音に対する遮音の適応制御実験と同様の結果である.即ち,移動騒音源を点音源と見なし,3次元的に放射する騒音を,防音壁で遮音する場合においても,防音壁の振動のみを評価したのでは,騒音伝達抑制につながらない事が明らかとなった. 以上の結果をふまえ,平成18年度科学研究補助金を再申請し,遮音性能の更なる向上を目指す予定である.
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