研究概要 |
本研究では"サイトエンジニアリングによる特性設計"を実現するため,BLSFの一つであるチタン酸ビスマス(Bi_4Ti_3O_<12>:BIT)薄膜の強誘電特性を複数の結晶格子サイトでのイオン置換によって制御・改善することを最終的な目的とする. BIT薄膜のBi^<3+>およびTi^<4+>各サイトの両者に対して同時にイオン置換を行い,イオン種およびイオン置換量のそれぞれが薄膜の強誘電特性に及ぼす影響を明らかにする.そして,置換イオンの種類および量を変動させることにより薄膜の各種誘電特性特性の制御を試み,最終的には特性の改善に最も適するイオン種・イオン置換量の組み合わせを明らかにする.これらの調査は薄膜の構成するイオン種およびイオン置換量の制御が容易な化学溶液法(Chemical Solution Deposition:CSD)を用いて実施する. 初年度の研究(平成15年度)においては,「(1)ランタノイド置換の影響[Bi^<3+>サイト]」および「(2)高価数イオン置換の影響[Ti^<4+>サイト]」について調査した.その結果,(1)種々のランタノイドイオンがBIT薄膜の強誘電特性改善に寄与したが,とりわけNd^<3+>置換BIT[(Bi,Nd)_4Ti_3O_<12>:BNT]薄膜において強誘電特性の向上が顕著であったこと,および,(2)TiサイトへのV^<5+>およびW^<6+>などの高価数イオン置換が分極特性の向上のみならず絶縁特性の改善に対しても有効であることが明らかにされた.更に第二年度の研究(平成16年度)においてはBi^<3+>/Ti^<4+>両サイトに対して同時にイオン置換を行う場合の組み合わせを考えた.その結果,BIT材料系においては(1)および(2)の効果を同時に実現することが可能であり,Bi^<3+>/Ti^<4+>両サイトに対する上述イオンの同時置換により,従来よりも優れた強誘電特性を有する薄膜材料を作製することができた. [790文字]
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