配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
本年度は,不可逆圧縮過程をともなうデータ圧縮技術のセンサーネットワークへの適用を検討し,その情報理論的及び暗号学的な分析を行った.特に,冗長性を全く有しない2値系列の情報源を精密に分析し,不可逆データ圧縮によって非自明なシステムの最適化が実行できる事実を発見した.ここで,同一の対象物を複数のセンサーが観測する「最高経営責任者(CEO)問題」を一般的枠組みとして採用し,システム全体が不可逆データ庄縮によって享受する情報利得を解析的に計算した.まず,観測ノイズと通信コストが一定という現実的制約によって,システムに非自明な利得構造がもたらされることを証明した.直感的には,センサー数の増加は(1)観測ノイズの相殺による情報利得の増加をもたらすが,同時に(2)高い圧縮率に起因する情報利得の低下を誘発するはずである.ところが.(1)と(2)のどちらの効果が優勢になるかは容易に判断できない.本研究では,この未解明の問題に対して情報理論的解答を与えた.つまり,観測ノイズが小さい領域では,少数のセンサーによる適度な分散化が情報利得を最大化し,逆に観測ノイズが大きい領域では,多数のセンサーによる圧倒的分散化が情報利得を最大にすることが数学的に示された.この結果は,不可逆データ圧縮が理想的な圧縮限界を達成する場合だけでなく,符号化のアルゴリズムが容易に構成できるような単純な圧縮形式に対しても同様に成立する.そして,最新の不可逆データ圧縮技術として注目を浴びている低密度生成行列(LDGM)符号がこの枠組みで有効に機能することも証明された.将来的には,同システムの暗号学的な分析と共に,各種の信号処理技術との融合も視野に入れた学際的研究の方向性が有望である.
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