研究概要 |
本研究の目的は,時変非線形システムを対象とし,免疫型システムを適用した精度良いオンライン同定法を確立すると共に,開発した同定法が実システムの同定に対しても有効であることを明らかにすることである。このため,本年度は主として以下を実施した。 1.昨年度に開発した遅延型状態変数フィルタによるRadial Basis Functionモデルの精度の面からの改善を検討した。その結果,Radial Basis Functionの基底関数としては従来のガウシャン関数で十分であること、中心位置の適切な選定が本同定において重要であることが確認できた。 2.真のシステムとモデルとの誤差を抗原、モデルを形成するRadial Basis Functionの調整パラメータ(中心位置、幅、基底関数の個数など)の候補を抗体群とみなし、遺伝的アルゴリズムや免疫型システムを適用することにより、オンラインで最適なモデルを生成・選択する同定アルゴリズムを開発した。 3.記憶機能を加味した免疫型システムを適用し、対象システムにおいて過去に類似の時間変化があった場合、その時に有効であった抗体(すなわちモデル)の微小修正で速やかに対象システムに追従できるアルゴリズムを開発した。また、開発したアルゴリズムに基づき計算機シミュレーション実験を行い、本アルゴリズムが妥当であることを確認した。 4.時変の非線形システムに対し、上記同定アルゴリズムを適用し、計算機シミュレーションにより同定精度と追従特性を検証した。その結果、従来の遺伝的アルゴリズムなどを使用した場合は推定値が大きく振動し、精度および追従特性に劣るに対し、開発した同定法では真のシステムが時間と共に変化した場合でもよく追従していることが確認できた。 5.実システムにおける上記同定アルゴリズムの有効性を検証するために、倒立振子システムを対象とした同定シミュレーション実験を行い、上記アルゴリズムでオンライン同定が可能であることを確認した。 6.直動型自立倒立振子実験装置から同定用入出力信号を測定し、これらの実データに基づく同定可能性を検証した。その結果、免疫型アルゴリズムの適応度はある程度高い値が得られるが、システムパラメータや非線形部の推定値は実データに含まれるノイズ等の影響によりかなり誤差を含むことが確認され、さらに計測ノイズに強い同定アルゴリズムへの改善が必要であることが明らかとなった。
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