研究概要 |
本研究の目的は,次世代転写用光源として期待される電子線露光を用いた半導体製造装置のための超精密ステージシステムの制御系開発である。本精密ステージの駆動用アクチュエータには,高制御分解能で,かつ真空雰囲気で連続駆動が可能な,新開発の非共振型超音波アクチュエータ(NRUSM)を用いている。この目的に対し,これまで(1〜2年目)に特にアクチュエータの有する性能を最大限発揮するための連続軌跡追従制御系(CTP制御系)の構築,摩擦駆動時に問題となる非線形摩擦に対する簡便な摩擦補償法の提案,駆動周波数の可変制御による定常速度偏差性能の改善を行った。 今年度(三年目)は,以下の提案および検証を行った。 ・CPT制御系に対する駆動周波数可変制御の導入 電圧制御に加えゲインスケジュールド制御による駆動周波数可変制御をCPT制御系に導入した。これにより,与えられた速度プロファイルに対して,最適駆動周波数(すなわち定常速度偏差が最小)でかつフィルタ帯域内で伝達ゲインが1となる制御系を構築し,その有効性を実験検証した。 ・駆動周波数可変制御による連続走行耐久性の改善 摩擦駆動型のNRUSMでは摺動摩耗が避けられないということから連続走行耐久性能が重要となる。そこで,NRUSMの駆動とスリップのメカニズムを考慮することにより,駆動周波数へ制限(周波数変化率への制限)を設けることで連続走行耐久性を大幅に改善する制御法を提案した。 ・逐次型適応同定法を応用した新しい摩擦補償法の提案 従来の摩擦補償では,ステージの静止条件を位置差分から導出していた。この手法では,位置センサの高分解能化に伴い,ステージ静止条件の導出が困難となる。そこで,逐次型適応同定法に可変忘却要素を導入し,このパラメータに着目することでステージの特性変化が検出できる。これ基づき静止条件判別ならびに摩擦補償を行う手法を提案し,その有効性を実験により検証した。
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