研究概要 |
本研究では礫床河川を対象にして洪水時の土砂輸送,川原植物の成長,河床付着藻類の一次生産に関する現地観測を実施した. 洪水時の土砂輸送については,異なる粒径の浮遊砂に対する数値計算を実施し,粒径別の土砂動態を明らかにするとともに,土砂に伴った栄養塩の輸送機構について検討を行った.計算の結果,計算対象として区間では,確率年2年程度以下の規模の洪水では高水敷に微細土砂が堆積し,高水敷土壌中栄養塩量が増加し,それ以上の規模の洪水では,微細土砂が流出し土壌中栄養塩量が減少することが明らかになった. 川原植物の成長機構について,比高,地下水水質と植物成長量に関する現地調査を実施した.観測の結果,礫川原に生息するツルヨシについて,比高が極めて小さい領域では,植物成長量が小さいことが明らかになった.植物の成長機構と栄養塩吸収の詳細について検討するため,ツルヨシを対象として水耕栽培実験を実施した.実験の結果,ツルヨシの成長および栄養塩吸収量は地下茎近傍の酸素濃度と密接に関連しており,酸素濃度が高いほど栄養塩吸収量が大きくなることが明らかになった.このことより,現地観測で見られた比高が低い地点での成長量の低下は,冠水による酸素供給量の低下に起因するものと推察される. 河川水域の一次生産者である河床付着藻類の増殖と種間競争過程について,実験,数値解析による検討を行った.実験,数値解析の結果,河床付着藻類群落は,初期に非糸状型藻類を中心とする群落が形成され,その後,時間とともに糸状型藻類を中心とする群落へと遷移することが明らかになった.
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