研究概要 |
本研究は,都市構造物に関連するマテリアルフローの将来変動を予測するため,建造物中に蓄積されている物質の量および滞留年数に着目し,マテリアルストックの詳細な推計と持続可能性評価に役立てるマップの構築を行った.建築物や道路といった様々な都市構造物を属性ごとに類型化し,それぞれにおいて建設資材のマテリアルストックの原単位を明らかにし,地理情報システムGISを活用することにより,都市の建設系マテリアルフローの推計を行った. ケーススタディ対象とした北九州市では,近年建築物の構造が,木造からS造,RC造へと移行しそれらのストックに占める割合が増加したことにより将来廃棄物の内訳も砂利石材が60%(1995年)から65%,鉄が8%(1995年)から12%へと割合が増加している.物質投入量に以前と比べ大きな差は見られないが,ストックからのフローが138万tに増加する.また,現在のリサイクル率をあてはまると,建築物の解体に伴い発生する83万tもの建設副産物の巨大な受け皿が必要となることが明らかとなった. 結果をもとに物質循環の持続性を視覚的に表現するため,地図上に3種類の表現方法を用いた.都市体重マップ,重量密度マップ,余剰物質量マップ(OPM, Over-flow Potential Map)である.OPMは,建築物や道路を壊したときに発生する物質量と,道路からリサイクルとして投入する量を差し引いたものを表現したものである.マテリアルフローを面的に把握でき,将来どの地域に建設物の更新が集中し,どれだけアウトフローが発生するかを視覚的に把握することができる. 本研究により,建設系マテリアルフローの将来変動をストックの変化に着目し予測することができた.今後,GISを用いてストックの変化を定量化できれば,更なる予測精度の向上や,循環型社会を目指した産業連携への検討材料の提供が可能となる.
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