研究概要 |
平成16年度は,先ず,平成15年度に計算された結果を審査論文としてまとめ,投稿した。その結果,平成16年度中に採用となった。概略を次に示す。 この審査論文では,床構面と雑壁の剛性・耐力・復元力特性を仮定した上で,既存軸組木造建物の地震応答解析を行い,地震応答への床種類の影響を考察し,保有水平耐力・壁量との関係を考察した。その結果,各種仮定下における結果ではあるが,最大地動速度50cm/sにおける耐力壁量から1階最大変位応答を推定する式を示した。また,偏心率が0.3以下であれば,2質点系の最大変位応答の1.2〜1.5倍程度の最大変位応答であること,剛床仮定を用いて計算すれば,精算法による最大変位応答を予測可能であること,が判明した。 次に,床構面と雑壁の剛性・耐力・復元力特性を仮定した上で,既存軸組木造建物の地震応答解析を行い,剛床仮定を設定できる床剛性を考察した。その結果,本報で示した合板床の床剛性の1/20以上であれば,剛床仮定を用いて計算しても良いことが判明した。 また,耐力壁・雑壁の壁毎の耐力ばらつきを考慮して保有水平耐力・最大変位応答を計算し,確定論による解析値と比較検討した。その結果,以下の事項が判明した。 ・保有水平耐力の分布は,安全を配慮した確定論による保有水平耐力の値以上となるので,安全を配慮した確定論により計算すればよい。 ・確定論値に対する最大応答変位の比の分布は,地震動の種類・大きさに大きく依存しており,現在のところ定量的な判断が不可能である。しかし,最大地動速度50cm/sの範囲でいえば,確定論で計算される1.2〜1.4倍程度の変形能力を確保していれば,安全と判断できる。
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