研究概要 |
都市シミュレーションは,複雑な都市を理解し,よりよい都市を作るための方法論として,古くから研究されてきた。時代とともにその手法は発展し,近年ではマルチエージェントシステムを応用した,人工社会の可能性が検討され始めている。本研究では,(1)都市の人工社会モデルを構成するために必要な概念を関連する様々な学問領域から抽出し,それらの仕様書といえる都市ドメインオントロジーに整理統合する。(2)そしてその知的基盤に基づき,拡張性に優れ理解の容易な都市の基礎的な概念モデルを構築する。(3)さらに具体的なケーススタディとして基礎モデルを実体化した都市モデルを構築し,MAUSシミュレーターでシミュレートすることを目的としている。 本年度は,都市構造に大きな影響を与え時空間的に変動する,都市の地価(地代)の決定メカニズムに関して,前年度に引き続き人工社会による都市モデルを構築し,土地供給者の収益や各種土地利用者の効用と,土地価格決定方法の関係や形成される都市構造の時間変化について分析した。今年度のモデルでは,土地の選定において割引率を考慮することや,土地供給エージェントの意思決定ルールを決定木で記述し,遺伝的プログラミングを用いて多目的最適化することを行った。 また,都市社会学の代表的テキストである都市社会地理学から都市の住宅市場の需要面に関する研究に関して重要な語句を抽出し,溝口らによる既存のトップレベルオントロジーを元に,オントロジーエディタ法造を用いてそのオントロジーのプロトタイプを構築した。
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