研究課題
若手研究(B)
本研究では、天然ガスからの水素製造に用いる高酸素イオン・電子混合導電性酸素透過メンブレイン(MIEC-OPM)の開発を実施している。対象材料は、これまでに13 sccm/cm^2と高い酸素透過速度を示すことが確認されているセリウム酸化物とスピネル型フェライトの微細結晶からなる複合体、及び、Pr-Al系ペロブスカイト型酸化物とした。昨年度の研究において、複合体型酸素透過メンブレインにおいて、15mol%Sm添加CeO_2(SDC)に15vol%のMnFe_2O_4(MFO)を添加した15SDC-15MFOが優れた酸素透過特性を示すことが見出され、今年度は実用化に向けて作製技術の検討を実施した。具体的には、テープキャスト法による自立膜の作製を試みた。まず始めに、良好なスラリーを得るためにPechini法により作製された複合体型酸素透過メンブレイン粉体、分散剤(α-テルピネオール)、可塑剤(ヂブチルフタレート・ポリエチレングリコールPEG400)、バインダー(ポリビニルブチラール)の配合量を粘度および沈殿試験により最適化した。混合したスラリーをドクターブレードを用いてPETフィルム上に成型した。焼成は、1300℃、5時間で行われ、結果として、反りや割れのない5cm角、厚さ150μmの自立膜が得られた。この膜は十分に緻密化が進行したため、機械的リークがなく、また、酸素透過速度としてもバルクと同等の値が得られた。なお、スラリーの調整に際してリン酸エステル系の分散剤を用いると分散性に優れたより良好なスラリーが得られたが、焼成後のメンブレインの酸素透過速度はバルク試料よりも10%程度低下した。これは、残存したリンが化合物を形成し、酸素透過を阻害するためと考えられた。得られた膜は純メタンの改質試験に供されたが、長時間試験においても割れ等を生じることなく、実際の改質器に適用しうることが確認された。
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