研究概要 |
燃料電池への水素供給を炭化水素ガスから水素吸蔵合金を使用して直接改質する考えのもと、その合金開発を試みた。CH_4の分解をGibbsの自由エネルギーから考えると、250℃で得られる分解水素圧力は、35MPaで約0.06MPaと低い。そのため、ベースとなる合金は純マグネシウムとなり、吸蔵速度の向上および炭化水素ガス改質の触媒としてカーボンの中でも表面積が大きいカーボンナノファイバー(以下CNFと略す)を選択した。従来の研究において、16hミリングしたMg-20mass%CNF(以下Mg-CNFと略す)複合材は、250℃,初期水素圧力0.85MPaの条件で理論吸蔵量の80%を1200minで吸蔵し、室温から0.5℃/minで昇温した際に373℃までに吸蔵量の96%を放出することを明らかにした。そこで、本研究は、Mg-10mass%Ni合金にCNFを添加し、更なる吸蔵速度の向上と共に放出開始温度の低下を図った。その結果、16hミリングしたMg-8mass%-20mass%CNF(以下Mg-Ni-CNFと略す)複合材の吸蔵速度は、大幅に向上し、理論吸蔵量の94%に当たる5.2mass%を700minで吸蔵する。その放出特性は333℃までに吸蔵量の96%を放出する。これは、Mg-CNF複合材と比較して約40℃の低下である。また、この複合材料は、室温,0.9MPaおよび250℃,0.1MPaの水素圧力でも速やかな吸蔵を示す。ボールミリング法により複合化され、吸蔵速度が向上したMg-CNFおよびMg-Ni-CNF複合材の組織には、繊維状のCNFが観察しにくくなることから、より安価な粉末状のグラファイトを用いて複合化を行った。その結果、32hミリングしたMg-8mass%-22.3vol%Graphite複合材の吸蔵速度は、理論吸蔵量の94%に当たる5.0mass%を540minで吸蔵するが、Mg-Ni-CNF複合材と比較して活性化処理時間が増加する。放出特性に関しては、Mg-Ni-CNF複合材と変わらない。
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