研究概要 |
海水環境におけるアルミニウムの耐食性向上のため,各種防食塗膜への添加剤について検討を行い,自己修復性に関する知見を得た。試験材料には,試験部9×9mmのアルミニウム合金(A3003)を用いた。試験液は3%NaCl溶液に添加剤を加え,塩酸でpH1に調節した後に,30℃に保持した。添加剤として,末端基(COOH, COF, COCl, CH_3)および炭素数の異なるフッ素化合物,架橋剤(ジイソシアネート系化合物),金属イオンを添加し,単体の効果および2種類の添加剤を入れた場合の複合効果について調べた。試験時間は48hとし,試験後に表面観察および質量減量の測定を行った。試験の結果,フッ素化合物のみを1000ppm添加した場合には末端基がCOOH, COF, COClのフッ素化合物に腐食抑制効果が認められた。特に,末端基がCOOHのフッ素化合物では炭素数が多くなるにつれて防食効果が高くなり,アルミニウムの質量減量は最高で1/100以下になった。架橋剤については添加なしの場合に比べて質量減量が約1/2程度であった。金属イオンについてはアルミニウム,マンガン,ニッケルイオンの順に高い防食効果を示した。これらの結果を踏まえて,添加剤の複合効果について調べた。フッ素化合物50ppmに架橋剤,3種の金属イオンを添加した場合についてアルミニウム合金の質量減量を測定したところ,架橋剤を加えた場合はフッ素化合物のみの場合よりも質量減量が増加し,フッ素化合物の防食効果を阻害する働きがあることが分かった。金属イオンを加えた場合は,フッ素化合物のみ場合よりも質量減量が減少し,ニッケル,マンガン,アルミニウムイオンの順に優れていた。これは単体の効果の場合とは逆の結果であり,フッ素化合物と金属イオンはそれぞれが別々に防食効果を示すのではなく,お互いに作用しあってより防食効果を高めたものと考えられる。
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