研究概要 |
1023KのNaCl-KCl溶融塩中とこれに1〜5mol%のAlF_3を添加した溶融塩中における純Nb試料のカソード分極曲線を測定した.その結果,AlF_3を添加していない塩中においては,-1.8V付近までは電位を低下させてもほとんどカソード電流は流れなかった.AlF_3を添加した塩では,-1.3V付近からカソード電流の上昇が認められた.この場合,AlF_3の添加量の増加とともに分極電位の低下に伴うカソード電流の上昇が大きくなった.したがって,AlF_3を添加した浴中では,-1.3V以下の電位域においてAlF_3が関与したカソード還元反応が起こっているものと考えられる.したがって,-1.3〜-1.6VでAlの電析を行った.その結果,電着したAlの質量は,分極電位の低下に伴うカソード電気量の増加とともに増加し,電着反応の電流効率は80〜90%と高かった.電析後の試料表面には,半球状のAlが分散し,このAl層と下地Nb界面に層状の合金相が形成された.合金相はNbAl_3であり,これは基板Nbを均一に被覆し,基板Nbとの密着性は良好であった. NbAl_3層を被覆したNb試料ならびにこれを被覆していないNb試料を大気中,1273Kで酸化した時の酸化増量曲線を測定した.その結果,被覆していないNb試料に比べ被覆したNb試料の酸化増量は極めて小さく,NbAl_3層を表面層として形成することにより耐酸化性が著しく向上したことがわかった.酸化後の試料断面を観察した結果,NbAl_3層を被覆していないNb試料では,生成スケールは約440μmと厚かった.一方,アルミナイド層を被覆した試料では,厚さ1μm程度の薄いスケールの形成が認められた.この生成スケールの違いは,アルミナイド層被覆試料と未被覆試料の酸化増量の違いに対応していた.酸化後の試料のX線回折の結果より,未処理材においてはNb_2O_5の回折ピークが認められ,形成した酸化物はNb_2O_5であることがわかった.一方,電析処理を施した試料では,NbAl_3,Nbのピークの他にα-Al_2O_3のピークが観察された.したがって,形成された酸化物はAl_2O_3であることが確認され,このAl_2O_3の形成により耐酸化性が著しく改善した. さらに耐酸化性を向上するために金属Nb上にNi-Al金属間化合物を電析法によりコーティングした.その結果,100時間の酸化実験でも加速的な酸化を示さず,表面には薄いAl_2O_3が形成し,さらに耐酸化性は著しく改善した.
|