研究概要 |
急速でかつ緻密な焼結体が得られるパルス通電焼結法における直流パルス通電がイオン拡散に与える影響を解明するにあたり,特に装置の構造上で不可避な負荷の影響を除去した場合に固体内で進行する通電の効果について検討を進めた.今年度は固体酸化物燃料電池に用いられる酸化物材料をターゲット材料として,酸化物イオン導電体およびプロトン導電体について通電により影響を受けるイオン輸送現象についての検討を進めた.固体酸化物燃料電池の材料として期待されるペロブスカイト型酸化物や希土類ドープセリアについて検討した.水溶解の反応性について,反応サイトとなる酸化物イオンや酸素空孔の反応性が近傍におけるカチオンの配置(ドーパントの配置)の影響を大きく受けることがわかり,イオンの輸送特性に近傍のポテンシャルを含めた影響を詳細に検討する必要性が明らかとなった.粒界と粒内での輸送特性の違いを検討するに当たり,希土類をドープしたセリアについて,浮遊帯法により単結晶の作製を試みたものについて,粒内でのイオン輸送現象について検討を計画していたが,数ミリ程度の大きな結晶粒径を持つ結晶の作製は可能であったが,動的な電気化学測定は行うことができなかったため,水溶解についてのドーパントの影響を評価するにとどまった.一方で,焼結プロセスにおける粒界部分のイオン拡散の影響を検討するにあたり,焼結材料としてセリアのナノ粒子の作製を試み,焼結組織での評価を目指した.今年度は報告されている様々な方法のうち,硝酸塩の熱分解法を参考にナノ粒子の作製を試み,セリアナノ粒子の作製ができたが,ドーパントの添加および焼結過程での組織変化についての十分な検討は行なえなかった.複数のイオン種が拡散する酸化物中の輸送現象に関して詳細な輸送特性の解明には,特定のイオン種の伝導についてイオン電極を用いた電気化学測定による直接的な測定により分極状態でのイオン輸送現象の解明が進むと考えられ,今後の課題となった.
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