研究概要 |
本研究では,p型シリコンウエハを用いることにより,セルフスタンディングの多孔質シリコン層を作成した.このとき,ウエハの抵抗値と電解の電流密度をパラメータとした.これまでの研究から,高抵抗のp型シリコンウエハを陽極酸化すると,ナノ多孔質の柱状構造が生成することを確認している.この場合には,多孔質層中に多孔質化していない領域が柱状に存在し,その部分は機械的強度の向上に寄与し,セルフスタンディング膜の生成に有利であると考えられる.しかしながら,このような予想に反して,高抵抗のp型シリコンウエハを用いると,セルフスタンディングの多孔質層を得ることができなかった.一方,低抵抗のp型シリコンウエハを用いると,ウエハ全体(500μm)を均一に多孔質化することができ,シリコンウエハをフレームとするセルフスタンディングの多孔質層を得ることができた.電流密度がある限度をこえると,気泡による応力で,多孔質シリコン層を破壊してしまう.集電体としてウエハの裏面につける金属は重要である.例えば,銅は陽分極の条件によらず自発的に多孔質層に析出した.陽極酸化された領域の形状測定の結果,多孔質層の表の面は溶解しておらず,凹または凸な面になりうることがわかった。試料の裏面のプロファイルは表の面と同じ方向に湾曲しており,残留応力の存在を示していた.ここで作成したような,比較的厚い多孔質層については,孔に残留している溶液を揮発させるのに数日を要することが重量変化測定,真空中での圧力測定により示唆された.
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