研究概要 |
超音波を用いてアルコール水溶液を霧化し,霧化液滴径分布と溶質の濃縮特性について検討した.また,濃縮機構をモデル化し,濃縮特性に及ぼす液滴径分布の影響について検討した.装置には透明塩化ビニル樹脂製の円筒(内径100mm)を用いた.底面中央に超音波振動子(周波数2.4MHz)を設置した.霧化液滴を同伴させるためにガス(空気)を流した.ガスの入口および出口の高さを150および400mmとし,塔断面積基準のガス空塔速度を変化させた.試料にはメタノール,エタノール,プロパノール水溶液を用いた.印加電力を18W,溶液温度を10℃とした.超音波照射後の溶液の体積および濃度を測定し,物質収支より同伴液中の溶質濃度,溶液平均濃度および同伴液流量を算出した.また,液滴径分布を光散乱法(日機装(株)SPR7340)により測定した. 霧化液滴径分布は正規分布となり,そのメディアン径および標準偏差を超音波周波数および液物性を用いて表せた.ガス空塔速度が高いほど,同伴液流量は高くなり,同伴液中の溶質濃度は低くなった.これは,ガス空塔速度が低くなるにつれて,濃度が低い大きな液滴が装置外へ同伴されなくなるためと考えられた.同一の溶液濃度については,同伴液中の溶質濃度はメタノール,エタノール,プロパノール水溶液の順に高くなった.気化の影響を無視し,液滴表面は溶質に取り囲まれており,表面溶質量は液滴径に依存しないというモデルから表面溶質量が計算され,その結果,液滴表面における溶質の厚さはアルコールの種類に依存しなかった.また,同伴液中アルコール濃度および同伴液流量は,霧化液滴径分布と表面溶質量から推算された.
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