研究概要 |
昨年度作製した窓付き超臨界製膜装置を用い,製膜過程のin situ観察手法の確立と,それに基づく原料探索,製膜条件の最適化を行った。 昨年度は,製膜過程を窓からCCDカメラにより観察し,流体および基板表面の色の変化として捉えることに成功した。今年度は,製膜過程の変化を定量的に観察するため,in situ紫外・可視分光測定を行った。タングステンランプの光を製膜装置の窓から入射し,基板に反射して戻ってくる光をCCDカメラに代えて取り付けたファイバー式分光器により観察した。これにより,(1)原料の溶解に伴う600nm付近にピークを持つブロードな吸収の増加,(2)基板上でのCu核発生・核の合一による700nm付近にピークを持つブロードな反射の増加が観察された。基板上でのCu核の状態と分光反射率の対応関係は,反射率変化の特徴的な段階で製膜を中止し,核や膜の電子顕微鏡観察を行うことで確認できた。基板温度を上昇させながら700nmの反射光強度を観察すると,ほぼ一定だった強度が核発生が始まる時点で急激に増大しはじめ,核が合一して連続膜になる時点で光強度の増加が飽和した。核発生が始まる温度が低い方が,平滑なCu膜を得られることがわかった。 この観察手法を用いて,製膜に適したCu有機錯体を探索した。当初用いたhfac錯体はフッ素がCuの核発生を阻害するため原料としては不適であることが判明した。そこで,フッ素非含有のacac錯体とdpm錯体を比較した。その結果,acac錯体の方が核発生開始温度が低く,より平滑な膜を製膜できることがわかった。また,TiNよりもRuの方が核発生温度が高いなど,核発生過程への下地の影響も明らかになった。
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