研究概要 |
カーボンナノチューブの発見以来,炭素材料への関心が益々高くなっている.カーボンナノチューブ,カーボンナノファイバーはその構造に由来するユニークな物理的,化学的特性を有しており,その応用が期待される.現在これらのナノスケールカーボンは,レーザー蒸発法,アーク放電法により合成されているが,これらの方法はエネルギー多消費型であり,しかも原料となる炭素源を連続的に供給することができないため,大量生産法には不向きである.一方金属触媒に高温で炭化水素を接触させることによりカーボンナノチューブが生成する.申請者も以前より炭化水素分解によるカーボンナノチューブ合成を検討しており,担持Ni触媒がカーボンナノチューブの合成に有効であることを見出している.さらに担持Ni触媒への助触媒の効果を検討した結果,NiにPdをごく少量添加すると炭素収量が著しく向上することが分かった.そこで担持Ni触媒へのPdの添加効果を,反応中のPd添加Ni触媒の表面種の構造変化を基に検討した.担持Ni触媒のNi種は,炭化水素分解に高活性を示しているときに金属Niとして存在するが,失活と同時にニッケルカーバイド種に変化した.これに対しPd添加Ni触媒の金属種は,炭化水素分解中常にPd-Ni合金として存在し,金属カーバイドの生成は確認できなかった.よって担持Ni触媒へのPd添加により炭化水素分解活性,寿命が改善された原因として,Pd-Ni合金が金属カーバイドに変化しないことが考えられる.
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