研究課題
若手研究(B)
水分子が作るカゴ状のフレーム内部にゲストガス分子を包接した、低温・高圧環境下で安定な物質であるガスハイドレートは、新しいエネルギー資源として、また蓄冷材やガスの貯蓄手段・輸送媒体として、その利用が近年注目されている。ガスハイドレートの生成・解離速度は結晶成長に伴う熱力学的過程の結果であるため、温度・圧力依存性が顕著であると考えられる。しかしながら、ハイドレートの生成・解離速度は過冷却度だけに寄らず、他の要因に大きく支配されていることが分かってきた。そこで本研究では、まだ未知の点が多い「氷からのガスハイドレート生成過程」に焦点を絞り、耐圧容器中の粉末氷にガスを導入して生成時の圧力・温度モニタリングを行ない、今年度は特にCH_4・CO_2混合ガス系におけるハイドレート生成時のガス分別効果についても合わせて実験を行なった。CH_4・CO_2混合ガス系での温度・圧力相図は、氷点以上の領域で多くの研究者がデータを得ているが、氷点下でのデータは皆無である。そこで、氷表面で起こると考えられるガスハイドレートの生成速度とともに、任意温度における混合ガスハイドレート平衡圧を求めた。その結果、混合ガスハイドレート平衡圧は純粋なCH_4ハイドレートおよびCO_2ハイドレートの平衡圧の間に存在し、CO_2の方がよりハイドレート相に取り込まれやすい傾向が定量的に示された。また、生成速度は純粋なCH_4ハイドレートより純粋なCO_2ハイドレートの方が1-2オーダーほど早いが、CH_4・を20-40%程度含む混合ガス系において、どの温度でも最速であった。このことは、ハイドレート結晶構造(大ケージ3個に対し小ケージが1個の割合)に対応して、分子の小さいCH_4が小ケージに選択的に取り込まれて生成を助ける可能性を示唆していて興味深いが、なお不明な点が多く、さらに解析を進めていく必要がある。昨年度までの実験結果は学術雑誌Ocean and Polar Research上で2004年9月に公表された。また、CH_4・CO_2混合ガス系の相図については学術雑誌Polar Meteorology Glaciologyに現在、投稿中である。
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Ocean and Polar Research 26
ページ: 515-521
Proceedings of the International Workshop in Modern Science and Technology, Kitami, Japan
ページ: 202-205