研究課題
若手研究(B)
植食性昆虫の食性幅(利用する寄主植物の種数)の進化を決定する要因として、1.寄主の硬さ、2.利用寄主の生活型、3.寄主の時空間的利用可能性、を仮説検証した。寄主情報があり、卵も大きく観察しやすい欧州産マメゾウムシ属12種とそれらの寄主植物ソラマメ連20種について、諸形質状態(幼虫の穿孔距離、寄主の硬度、寄主の生活型)と、種子の時空間動態(年変動・空間変動)を引き続き調査した。その結果、マメゾウムシの穿孔距離は、主な利用寄主の莢・種子の硬さに比例することが確かめられた。同じ寄主を利用する複数のマメゾウムシの間で産卵部位が異なり、これについても穿孔距離と産卵部位の硬さが対応していることが判明した。幼虫の穿孔距離または寄主硬度は、それぞれ利用寄主種数またはマメゾウムシ種数には関係がなかった。よって寄主の硬さは寄主の利用可能性を決定する要因のひとつではあるが、寄主範囲は別の要因も関与して決まると言える。寄主マメの単位サンプリング時間当たり種子数は年によって異なり、1年生の方が多年生より種子が多かった。またマメゾウムシの種子あたり卵密度も年変動が大きく、多年生寄主上では一年生寄主上より高密度だった。多年生ソラマメ連はこれらを利用するマメゾウムシ種数も多い。種子数の変動係数は多年生の方が小さく、平均値が低くても毎年安定に利用可能なため寄主として利用される頻度が高くなったと考えられた。異なる生息地間の種子数の差は認められなかったので、マメゾウムシ属では資源植物の空間変動より時間変動の方が利用パターンの進化に重要な役割を果たしたと考えられる。
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