研究概要 |
一般にフェレドキシン(Fd)とFd依存性酵素間の電子の授受は電子伝達複合体を形成して行なわれることが知られている。共同研究者の大阪大学長谷教授グループによるFd改変体を用いた相互作用実験から、種々の還元酵素はそれぞれFdの異なったアミノ酸残基を認識しているという興味深い実験結果が報告されている(J.Biol.Chem.274,29399(1999))。電子伝達複合体の形成様式が電子を受け取る側の酵素の種類によって個別的であることは、炭素、窒素、硫黄の各代謝系へ光還元力を分配する位置にあるFdが構造のレベルで電子伝達を制御している可能性を示している。 今回、本若手研究において硫黄同化において重要な役割を担う亜硫酸還元酵素とFdとの複合体の結晶構造解析に成功した。構造解析に成功したのは、正方晶系(P4_12_12,a=103.324,b=103.324,c=255.088Å,α,β,γ=90°)の結晶である。X線回折強度データ収集は高エネルギー加速器研究機構、物質構造科学研究所、放射光研究施設において行い、亜硫酸還元酵素とFdに含まれる鉄原子の吸収端近傍に於ける多波長異常分散法により構造解析した。鉄原子の異常分散差を係数とした差フーリエマップ上にシロヘム、4Fe-4Sクラスター、それにフェレドキシンの2Fe-2Sクラスターに含まれる鉄原子12個を確認している。現在、2.2Å分解能で分子モデルを構築中である。 まだ分子モデルを構築中なので、現段階では正確な分子構造について考察することは出来ないが、シロヘム、4Fe-4Sクラスター、フェレドキシンの2Fe-2Sクラスターの3つの酸化還元中心間の距離は、それぞれ4.3,13.8Åである。
|