研究概要 |
本研究では,ERM (ezrin/radixin/moesin)タンパク質のひとつであるラディキシンのFERMドメインと,三量体Gタンパク質αサブユニットの複合体を調製・共結晶化し,その複合体構造を決定することを目的とした研究をおこなった。 前年度に,GαとFERMドメインを複合体形成させた状態で精製することを試みたが,Gαが不溶化してしまう問題を解決することができなかった。そこで,Gαを全長ではなく,FERMドメインと相互作用する部位のみを切り出して発現させることを試みた。特定の二次構造を形成しておらず,フレキシブルと考えられる部位については,ペプチド合成による試料調製をおこなった。これらのGαドメインおよびペプチドと,前年度に精製したFERMドメインを用いて,プルダウンおよび表面プラズモン共鳴センサーによる分子間結合実験をおこなった。その結果,細胞内シグナル伝達における結合能として妥当と考えられる結合を観測することができた。ふたつのタンパク質を用いた共結晶化実験を行ったところ,複合体の結晶はまだ得られていないが,FERMドメインの単体が2量体形成した新しい結晶系の結晶を得ることができた。SPring-8でX線回折実験をおこない,分解能2.9Åのフルデータを収集した。分子置換法による位相決定をおこない,構造の精密化をおこなった結果,信頼度因子R/R_<free>=25/28%の立体構造を決定することができた。現在,論文を投稿準備中である。 また,ゲノムの安定性を維持するのに重要なヒト由来のタンパク質複合体であるFEN1-PCNAと,細菌A.xylanus由来の過酸化物分解酵素ペルオキシレドキシンン(AhpC)の結晶構造解析に成功し,それぞれを国際科学雑誌にて発表した。
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