研究概要 |
細胞分裂において、その分裂面の位置を正しく決定するということは、最も重要なプロセスの一つである。近年、原核生物においてMinC, MinD, MinEなどの一連のタンパク質群が、互いに協調して細胞分裂面を決定していることが明らかになりつつある。本研究は、これらのタンパク質の複合体の立体構造を決定し、その相互作用様式を調べることによって、分裂面位置決定の分子機構を明らかすることを目的とする。 まず、高度好熱菌Thermus thermophilus HB8由来のMinC, MinDの大腸菌における発現系を構築し、発現させたMinC, MinDが活性を持つことを確認した。両者の複合体を結晶化したいと考え、無細胞系や、カイコにおける発現系で、MinC, MinDの共発現を試みたが、複合体を得ることはできなかった。両者の相互作用を調べたところ、相互作用は弱いことが分かった。複合体の結晶は得られなかったが、MinD 2量体の結晶を得ることに成功した。現在明らかにされているMinDの立体構造はいずれも単量体であるが、最近になって、MinDは2量体で機能することが示唆されている。従って、得られた結晶を用いてMinD 2量体の構造を決定すれば、MinDが実際に機能する際の姿が明らかになると期待される。この結晶は、4Å分解能の反射しか与えず、解析は非常に困難であった。結晶化条件を様々に検討したが、分解能は改善されなかったため、C末端を10残基短くしたタンパク質を作成し、結晶化を行った。この結晶は、3Å分解能まで回折した。より良質の結晶を得るため、平成16年度は、引き続き条件検討を行った。 MinD以外にも細胞分裂に関与すると考えられているタンパク質について構造解析を行い、その中でGlucose-inhibited division protein Aの構造解析に成功した。
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