研究概要 |
我々は,生体膜によって隔てられた細胞内外にわたる物質輸送を理解するために,膜輸送タンパク質の立体構造に基づいた分子シミュレーションを行った.本研究では、特に、生体のカルシウム濃度の維持に重要な役割を担っている筋小胞体カルシウムポンプに関する計算を行った.カルシウムポンプは,分子量約11万(アミノ酸残基数994)の巨大なタンパク質であり,10本の膜貫通ヘリックスと3つの大きな水溶性ドメインを持っている.このため,この膜タンパク質が生体膜を構成する脂質二重膜中でどのような形で安定化しているのかを理解することは,その機能を理解する上で本質的に重要な課題であった. 我々は,カルシウム結合型,非結合型の2つの立体構造を用いた原子数25万以上の巨大なシステムの分子動力学計算を10nsec実行した.それぞれの状態において,脂質二重膜に対するカルシウムポンプの配向を変えた複数の初期構造モデルを試した.計算で得られたトラジェクトリを用いて,膜貫通ヘリックスの安定性を調べることにより,カルシウムポンプの脂質二重膜に関する最も安定な配向を明らかにした.
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