本年度は、光反応中心内の酸化還元電位を微妙にコントロールしながら時間分解吸収スペクトルを測定するセットアップの組み立て(特にセルの設計)を行い、その傍ら、申請者らの仮説を裏付ける光反応中心の時間・温度分解ESRスペクトルの詳細な解析を行った。 東京工業大学の高宮健一郎教授及び東京都立大学の永島 賢治博士を訪問し、光反応中心内の酸化還元電位をコントロールする方法について助言を受け、実験装置を見学した。そこで得られた情報を元に、光反応中心の内部、キノン結合部位に入り込み、電子を最終的に伝達するメディエーターの選択を行った。また、窒素雰囲気下で酸化還元部位を制御したまま吸収スペクトルが測定できる4画透明石英セル付の電気化学セルを設計し、試作品第一号が完成した。吸収測定範囲200〜1OOOnmが可視光を吸収するメディエーターにより疎外されないような条件を検索し、時間分解測定を行う事が次の重要な課題である。 また、昨年度に測定した化学的に還元したRCの時間分解・温度分解ESRスペクトルを特異値分解とグローバルフィッティングを組み合わせて詳細に解析することにより、15シスCarの構造変化に由来すると見られる2種類のスペクトルのダイナミクスを広範囲な温度で説明できるモデルを確立し、既に研究代表者らが提唱している、「通常のT_1の減衰よりも速いT_115シスCarの構造変化が関与するT_1エネルギーの二段階散逸」という仮説の立証に一歩近づいた(「光合成細菌の色素系と反応中心に関するセミナ-XI」及び「日本植物生理学会2003年度年会」で口頭発表を行った)。また、フロリダ大学のAlexander Angerhofer教授を再度訪問して討論を行い、比較のためにLH2アンテナ複合体の測定を行った。近々論文としてまとめる準備をしている。
|