研究課題
若手研究(B)
mDab1はreelinシグナルにおいて脳の発生における細胞移動をコントロールする遺伝子である。細胞移動はアクチン細胞骨格の再構成を伴い、これはしばしば普遍的なアクチン細胞骨格制御タンパク質によってなされる。そこで、mDab1を非神経細胞(COS-7細胞)に異所的に発現させてみたところ、フィロポディア形成を誘導すること細胞の計時的観察により見いだした。このフィロポディア形成はN-WASP依存的であることを,N-WASPのドミナントネガティブ体を用いて示した。N-WASPはmDab1とin vitro, COS-7細胞中、および胎児脳において相互作用することを免疫沈降実験により確認した。さらに興味深いことに、N-WASPとの相互作用およびフィロポディア形成にはmDab1のN末部のPTBドメインだけで必要十分だった。精製したmDab1のPTBドメインはN-WASPをin vitroで活性化し、Arp2/3複合体依存的なアクチン重合を引き起こした。reelinは神経細胞でSrcファミリーキナーゼを活性化し、mDab1のリン酸化を誘導することが知られていたので,Srcファミリーキナーゼの役割について検討した。COS-7細胞中でmDab1はSrcファミリーキナーゼによってリン酸化されることを見いだし、このリン酸化はmDab1のポリユビキチン化、および分解を誘導した。興味深いことに、mDab1のリン酸化はフィロポディア形成を抑制した。reelinと神経細胞の接触は、大脳発生において神経細胞の移動を止め、大脳の層構造の構築に関わると考えられているので、mDab1がSrcによるリン酸化によりフィロポディア形成能を消失することは、神経細胞がreelin刺激で止まることを反映している可能性が示唆された。mDab1は胎児由来の初代培養神経細胞において成長円錐の先端に存在したが、この神経細胞をreelinで処理し、mDab1のリン酸化を誘導しても神経細胞の形態には顕著な変化が見られなかった。従って、mDab1-N-WASPの経路が、実際の神経細胞移動においてどのような役割を持っているか、初代培養系ではでは明らかにできなかった。
すべて 2005 2004 その他
すべて 雑誌論文 (6件) 文献書誌 (6件)
EMBO J. (in press)
Oncogene 24
ページ: 1309-1319
J Biol Chem. 279
ページ: 54862-54871
Biochem J. 384
ページ: 1-8
Blood. (in press)
Nat Cell Biol. 6
ページ: 420-426