研究概要 |
扁形動物プラナリアの一種、リュウキュウナミウズムシ無性個体のクローン集団(OH株)に、有性生殖のみを行うイズミオオウズムシを餌として与えると、雌雄同体性の生殖器官が発達し、有性生殖を始めるようになる。体研究は有性個体に含まれている有性化因子を単離・同定することを目的としている。 材料にはイズミオオウズムシおよび、イズミオオウズムシの投餌によって有性化した有性化OH個体を用いた。湿重量約4gの有性個体をPBS中で懸濁し、ユ00Kxgで遠心にかけた。その後、上清画分をSep-Pakカラム(tC18,Waters)に通した。純粋、10%MeOH、30%MeOH、100%MeOHの順に溶出すると、純粋画分と10%MeOH画分の両方に有性化活性が認められた。これら両画分を合わせた画分をM1画分とし、AKTA purifier(Amersham Bioscience)を用いて、逆相クロマトグラフィー(Symmetry^<【○!R】>C18,Waters)を行った。条件検討を重ねて、メタノール勾配による溶出をせずとも純粋を通すことにより、おおよそ20カラムボリューム付近で有性化因子が回収できることが分かった。この画分に対して、ゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex^<TM> Peptide 10/300 GL, Amersham Bioscience)を行ったところ、有性化活性を示すピーク(紫外波長:220nm)をひとつに限定することができた。現在はこのピークを含んだ画分を収集中であり、ある程度量が貯まり次第、構造解析の予定である。 また、前年度報告では、陰イオン交換樹脂に有性化因子が吸着することが示唆されていたが、今回、M1画分に対して、陰イオン交換クロマトグラフィー(RESOUCE^<TM> Q, Amersham Bioscience)を行ったところ、NaCl勾配0mM〜450mMの画分にOH個体を完全に有性化させられる活性が認められた。この結果も含めて、有性化因子は500Da以下の低分子で、若干の疎水性をもつ陰性物質であることがわかった。
|