研究概要 |
カイメン,ホヤ,哺乳類(ヒト,マウス)精巣にて発現しているII型カルシフォシンは全て208アミノ酸残基から構成されていると見積もられ,互いにアミノ酸レベルで60%もの相同性を示す事から,広く後生動物に存在し,何らかの根元的な機能を司っているのではないかと予想されている。近年,数多くの生物種において蓄積されつつあるESTデータベースをサーチする事により,下等脊椎動物(魚類・両生類)を始め,刺胞,棘皮,頭索,節足,線形動物などにもホモログの存在が確認された。カルシフォシンはこれまで余り注目を浴びていなかった分子であるが,カルシフォシン・ファミリーとでも言うべき一大タンパク質ファミリーを構成しているようである。 CCBP-23は甲殻類の筋肉に見出されているカルシウム結合タンパク質である。遺伝子構造を解析した結果,3つのイントロンの挿入位置がヒト・カルシフォシン遺伝子と一致,明らかに共通祖先遺伝子から派生してきた分子である事が伺える。 一方,II型カルシフォシンの機能を探る一歩としてマウスの各臓器における発現レベルを調べた。DIGを標識に用いたノザンでは検出できないレベルではあるが,RT-PCRを用いて調べたところ,精巣と共に肺での発現量が比較的高い事が判明した。次にII型カルシフォシンと相互作用するタンパク質を同定すべく,大腸菌系Two-hybrid systemを用いてのスクリーニングを試みた。しかしながら非特異的反応が極めて高く,長時間の試行錯誤によっても改善できなかった為,この系での同定は断念せざるを得なかった。GST融合カルシフォシンを用いての発現ライブラリー(λ系ファージ)のスクリーニングが有効ではないかと示唆される。
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