研究概要 |
ジャポニカ×インディカのリコンビナントインブレッドラインを用いて葯の裂開に関与するQTLの染色体上の位置と機能を調査した結果,以下の結果を得た. 1.7つのQTLが検出され,その染色体上の座乗位置が明らかとなった. 2.7つのQTLの多くが相補的に作用していると考えられた. 高温低湿条件をグロースキャビネットを用いて作出し,国内外の在来品種,改良品種を用いて葯の下部の裂開部のサイズと受粉の安定性との関連を調査し,以下の結果を得た. 1.高温低湿条件下においても薪下部の裂開部の長さと柱頭に20粒以上の花粉が付着する穎花の割合との間には強い相関関係が認められた.正常な受精には20粒の柱頭付着花粉が必要であることから,葯下部の裂開部の長さは高温多湿条件下における不稔耐性と密接に関係していると結論した. 2.高温低湿条件下での薪下部の裂開長と常温低湿条件下での葯下部の裂開長との間には強い正の相関関係が認められ,葯下部の裂開長は受粉の高温耐性を示すマーカーとして利用できることが明らかとなった. 高温条件下において受粉プロセスを観察し,葯下部の裂開が受粉において果たす役割を検討した結果,葯下部の裂開が大きい品種では,開花時に容易に花粉が柱頭に落ちるのに対し,葯下部の裂開が小さい品種では,開花直後に柱頭に花粉が落ちにくく,このため高温条件下における受粉が不安定になると考えられた. 顕微鏡を用いて葯の構造と葯下部の裂開部のサイズとの関係を調査した結果,エンドセシウム細胞におけるU字型の肥厚,大小葯胞の長さの差異,およびストミウムにおける細胞壁の溶解が裂開部の大きさに関係しているのではないかと考えられた.
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