研究概要 |
東京近郊の地域を対象にして取得したハイパースペクトラル画像の解析を進めるとともに,現地において土地利用状況を調査し,破棄農地の抽出手法の検討を行なった。その結果,一年以上に亘って放棄された農地では,中間赤外域において特徴的な反射特性を示すことが示唆され,ハイパースペクトラルデータの利用により放棄農地の分布を把握する可能性が示された。しかし,都市近郊地域では,農地の市民農園としての転用が多くみられ,その際に十分に管理されない農園では放棄農地と同様の反射特性を示すことも明らかとなった。そこで,これらを分離し,放棄農地だけを抽出するために,区画の形状(方形かどうか)と一塊の大きさに着目する手法を提案し,放棄農地分布図を作成した。得られた分布図を用いて,放棄農地の分布地域の特徴について検討した結果,近年人口減少が激しいニュータウン開発地域の周辺において特に多く放棄農地がみられることが示唆された。現地でのヒアリング調査から,人口が安定している郊外地域では,放棄農地の市民農園利用への展用などが可能なのに対して,人口が減少しつつある地域では,放棄農地を都市的土地利用に転用することも市民農園として使用することもできないために,放棄農地が増加する傾向にあることが示された。 東京近郊を対象とした解析と並行して,比較対象地してフィリピン・メトロマニラ近郊地域を取り上げて,都市化による土地利用の混在化や農地放棄が起こるプロセスを整理し,そこで生じている環境問題について現地調査を行なった。その結果,道路沿いでの宅地開発進行により,アクセス路を失うことで内側の農地で耕作放棄が進むこと,放棄農地にはスクウォッターが流入することで更に農地の放棄が進むことなどが考察された。東京・マニラ共に都市近郊では耕作放棄地が増大しつつあったが,人口増加都市と減少都市ではその発生プロセスに違いがみられることが示唆された。
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