研究概要 |
従来のキュウリ品種よりも主枝に多くの雌花を着ける多雌花性,全雌花性キュウリ品種を利用することで,短期間に多くの果実を収穫できると思われるが,実際には多くの果実が同時に着果すると,一部の果実が落果する競合とよばれる現象が起きる(Hikosaka・Sugiyama,2004).昨年度の研究によって,先に開花・肥大した果実を摘果すると,後から開花した果実の肥大が再開されることが明らかとなり,このことから,先に開花した果実の存在,あるいは果実の生長が後から開花した果実を抑制していると思われた(Hikosaka・Sugiyama,2005). そこで本年度の実験では,先に肥大した下位節の果実の温度を5℃または10℃に冷却することで,着果させたまま一時的に果実肥大を抑制することを試み,後から開花した上位節の果実の生長を調査した.その結果,果実を5℃に冷却した場合に果実生長が完全に停止し,上位節の果実は正常に肥大した.また,冷却処理を解除すると下位節の果実は肥大を再開し,上位節の果実も肥大を続けた.よって,先に開花した果実が着果しているだけでなく,肥大していることが,上位節の開花後間もない果実の生長を抑制することが示唆された(Hikosaka・Sugiyama,発表予定).次に,上位節の開花時に下位節にある着果負担の重さや本数を様々に変化させて,上位節の落果率について調査した.この結果として,重さ,本数に関わらず大きな着果負担がある場合に落果率が高くなると予想されたが,実験の結果,落果率が高くなるのは着果負担の総重量ではなく,着果している果実のステージによることがわかった.すなわち,着果負担の重量は小さくとも,急激に生長している若い果実が着果,肥大していることで,上位節の落果がおこりやすかった(Hikosaka・Sugiyama,発表予定).以上の結果から,果実間の競合のメカニズムは光合成産物の受容と供給だけでは必ずしも説明できず,他の要因(例えば植物ホルモンなど)の関与も考えられた.
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