研究概要 |
本研究では,バラ"ローテローゼ'をアーチング栽培し,環境要因と光合成・物質生産との関係を明らかにし,樹形ならびに環境要因の最適化のための情報を明らかにしようとした. バラの群落光合成速度は,光合成有効放射束が約500μmol・m^<-2>・sec^<-1>で飽和に達し,花らいを着生していない場合には25℃,花らい着生した枝では20℃近辺に最適温度が存在する.また,バラの開花周期や切花の総新鮮重と,温室内の変動する環境要因のデータとの関係解析から,最も生産性が上がる栽培適温が25℃近辺であり,光合成に適温と一致することが示された. 本年度は,特に湿度環境ならびに群落周辺の風速が生産性に及ぼす影響を調査した.栽培湿度が高まると,収穫枝群落の総新鮮重が増加することが明らかとなり,これは水ストレスが軽減されることにより,気孔の開度が大きくなり,ガス交換が円滑になった結果と考えられた.一方,葉周辺の風速を上げることにより,光合成速度が低下することが示された.ただし,低湿度あるいは葉への送風栽培は,気孔の小型化と健全な開閉機能を付与し,これは切花としての収穫後の花持ちに大きく影響することも示された. これまでの研究で収集した知見を基に,システムダイナミックモデル作成のベースとして,光合成専用枝および光・温度・風速などの環境条件が,群落の純同化率,呼吸速度等の収量形成要因に及ぼす影響についてのダイヤグラムの作成を行った.さらに,このダイヤグラムを基に,これまで得られた環境要因,生育ステージと光合成との関係式を組み込んだシステムダイナミクスモデルをコンピュータ上にシステム解析ソフトウェアを用いて展開した.
|