研究課題
若手研究(B)
日和見感染菌であり、臓器移植患者等の免疫不全の患者の増加に伴って深刻化している深在性真菌症の主要原因菌であるCandida albicansの病原性を解明するために、本菌のゲノム上にコードされている蛋白質リン酸化に関わる酵素を網羅的に遺伝子破壊することを計画した。平成16年度ではプロテインキナーゼについては一部の遺伝子について破壊の計画が進行した。プロテインフォスファターゼ(CaPPase)については全ての遺伝子の破壊(必須遺伝子は除く)に成功している。形態変換に関与する様々な転写因子についても遺伝子破壊を行いその表現型を観察した。また、その転写因子のリン酸化状態を調べるために、アフィニティータグを付加した株を作製し、ウェスタン解析を行った。今後、破壊株の増殖や形態変換能等の表現型を中心に網羅的な解析を行う予定である。また、2種類のプロテインキナーゼ及び1種類のプロテインフォスファターゼについて詳細な解析を行った。そのうち一つのプロテインキナーゼCaHsl1pについて解析を行った結果、遺伝子破壊株の形態および病原性に異常があることを見出した。さらに、申請者が開発した様々なC.albicans用の分子生物学的ツールを用いて、CaHsl1pの蛋白質の局在、発現量の変動、リン酸化状態の変化等について詳細に解析を行った。以上の結果から、C.albicansの形態変換について新たなシグナル伝達経路を見出し、それが病原性とも関連性を持っていることが示唆され、その解析結果はMolecular Microbiologyに掲載された。プロテインフォスファターゼCaYvh1pについて遺伝子破壊株の解析の結果、酵母形・菌糸形において生育・伸長に関与しており、病原性にも関わっていることが示唆され、現在、英文雑誌に投稿中である。本研究において様々な遺伝子破壊株を作製を行ったが、これから作製する予定の遺伝子破壊株も含めた網羅的遺伝子破壊および表現型の観察によって、新しい抗真菌剤のスクリーニングのターゲット探索への応用が可能であり、深在性真菌症の克服に貢献することが出来るだろう。
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