研究概要 |
現在までに申請者はフタトゲチマダニより新規接触相阻害物質を同定し、これが高分子キニノゲン及び血液凝固第XII因子と結合し、両接触相因子が異物表面と結合するのを阻害して、接触相の活性化を阻害することを明らかとしている。平成15年度は更に接触相阻害物質が持つ2つのKunitz型タンパク質ドメイン(N-domain及びC-domainと表記)に着目し、1)N-及びC-domainともに接触相活性化阻害に関与すること、2)C-domainが接触相活性化をN-domainより強く阻害すること、3)C-domainが高分子キニノゲンの異物結合部位に特異的に結合することを明らかとした。また、接触相阻害物質単独の結晶化を試み、3種の結晶を得た。平成16年度は接触相阻害物質に関する各種変異体を作製し、阻害に必須なアミノ酸残基の同定を試みた。その結果、N-domain中ではTrp29,Leu30,Tyr31,Tyr43,Glu56,Glu60,C-domain中ではTyr85,Va186,Tyr87,Va197,Phe113,Glu117が阻害に深く関与することを明らかとした。次に接触相阻害物質の立体構造解明を試みた。平成15年度に得た3種の結晶に関し、X線結晶解析を試みたが、良好な結果を得ることができなかった。そこで、接触相阻害物質がKunitz型タンパク質であることを利用し、Molecular Operating Enviromentによる分子構造予測モデルを作製した。更に得られたモデルと変異体の実験結果を合せて考察すると、阻害に関与するアミノ酸は阻害分子表面上の一部に集中して存在することが示唆された。これにより、この接触相阻害分子はこの領域を使って標的分子と相互作用すると推定した。
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