研究概要 |
本研究では,マツタケの外生菌根形成からシロの形成に至るまでに必要な生物的・非生物的環境条件を明らかにすることを目的とする。同時に,シロの形成・発達過程におけるアカマツ-マツタケ共生系の生理的な変化の解明を目指す。今年度は,以下の成果が得られた。 ポリカーボネート製の容器に滅菌した培養土を入れ,マツタケの培養菌糸を接種した後に,無菌的に発芽させたアカマツ実生を移植した。その結果,接種5ヶ月後には壁面の外側からマツタケ外生菌根の形成が確認された。その後,外生菌根の増加や菌根周辺の菌糸の伸長が認められ,野外で観察されるシロと同様の形態をした人工シロを形成した。以上のことから,本法は,半自然および野外へ導入する大型のマツタケ外生菌根形成苗および人工シロを作出するための有効な手法になりうるものと考えられた。接種20ヶ月後には,アカマツの樹高は30cmに達し,シロも維持されていた。一方,マツタケ未接種のアカマツの樹高は10cm程度であり,また,枯死する個体も多かった。したがって,マツタケの外生菌根形成およびシロの形成は,アカマツの成長を促進するものと推測された。 アカマツ成木から誘導された細根へマツタケ菌を接種した結果,接種5週間後からマツタケ外生菌根の形成が確認され,菌根周辺にはマツタケ菌糸の伸長も認められた。しかし,接種1年後にはシロの形成は認められず,また,多数の外生菌根形成が認められたものの,マツタケ外生菌根を確認することもできなかった。したがって,本法は,野外のアカマツ成木へのマツタケ菌の有効な接種法になりうるものの,人工栽培法を確立するためには,さらに野外における人工シロの誘導条件を明らかにする必要があるものと考えられた。
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