研究概要 |
絶滅の危機に瀕したメコンオオナマズの保護に資するため,タイ国メコン川において養殖メコンオオナマズにID識別型超音波発信機を装着して放流し,追跡した。2004年7月に,4尾(全長76.5〜82.5cm,体重4.6〜5.7kg)の腹腔内にID識別型超音波発信機(CodedV16,Vemco)を埋め込み,ナコンパノム近郊のメコン川に放流した。ミャンマーとの国境に近い上流のチェンコーンからラオスとの国境に近い下流のコンチアムまでのタイ国内を流れるメコン川全流域に7台の設置型受信記録機(VR1,Vemco)を設置し,放流後の移動を追跡した。放流直後,供試魚は約1週間にわたって放流地点周辺にとどまったが,その後移動を開始し,1尾が1.9日後に40km上流まで,さらに4.7日後に100km上流まで移動した。移動速度は21km/日であったが,それ以上上流に移動することはなかった。さらに詳細な移動状況を把握するために,4尾(全長76.5〜84.0cm,体重4.9〜5.8kg)の腹腔内に水深センサー付超音波発信機(CodedV16P,Vemco)を埋め込み,放流地点の上流40kmと100kmに設置した2台の設置型受信記録機(VR2,Vemco)により移動中の遊泳水深を記録した。40km上流の受信機により約10分間にわたって1尾の遊泳水深が記録され,メコンオオナマズは水深1〜12mの範囲で鉛直移動を伴いながら移動していたことが明らかとなった。昨年度までに得られた結果と併せると,養殖メコンオオナマズは放流後,上流に移動する傾向があり,その移動範囲は最大で約100km,移動速度は約20km/日,移動中に鉛直移動を伴うことが明らかとなった。
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