研究概要 |
16年度までに開発した「氾濫域流況詳細解析モデル」に対し,排水機場やゲートなどの水利施設の操作・管理モデルを組み込み,洪水や津波・高潮といった水災害時の排水管理を行った場合の氾濫域の変化を解析できるモデルへと改良した. 本モデルで使用した解析手法である有限要素法は,多くの流体解析で用いられる差分法に比べて計算負荷が大きいことが知られている.このため,本モデルを用いて大規模なシミュレーションを行うには大きな計算機資源が求められることから,大型計算機センターで用いられる並列計算機で計算速度が向上できるようプログラムのチューニングを行った.その結果,8台のCPUを用いた計算では,単体の場合と比較して7.5倍の計算速度の向上が確認された. 本モデルをさらに発展させるため,水災害時に氾濫水とともに運ばれる土砂の堆積域を予測することを目的としたリスク評価モデルのプロトタイプを作成した.このモデルを検証するため,1999年9月の台風18号に伴う八代海沿岸域の高潮による現象を再現し,実際の堆砂域と比較した.その結果,堆砂域の数,位置については良好であったが,その範囲については若干小さめな予測結果が得られた.これは,氾濫域の地盤標高データの精度が低いため,氾濫域を十分に再現することができないことに起因していると考えられる.このように地盤標高データの精度が低い場合の氾濫域の解析は,今後の課題である.
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