研究課題
若手研究(B)
昨年度に成功したラット脳におけるfMRI法の精度を上げ、脳機能評価法としてラット脳fMRIの再現性を上げる事を行った。高品位fMRIのためのBOLDコントラスト描出には高感度のサーフェスコイルの作成が必要になる。ラット頭部全域を覆いながら大脳皮質から視床下部までRFパワーが入る必要がある。様々なサイズのサーフェスコイルを試作し、本研究に最適なサーフェスコイルを検討した結果、16mm径の一巻き型が最適であった(昨年度まで行っていた状態より信号強度で8倍の感度上昇)。次に、実験の再現性を上げるためにコイルとラット頭部がマグネット中心部に常に固定され、しかもラット頭部とコイルの位置がMRI撮影を行った際に大脳皮質第一体性感覚野の領域が常に描出されるような専用の固定台の作成を行った。これら2つの改良によりBOLDコントラストが明瞭に描出されるようになった。この改良により、痛み刺激をカプサイシン刺激で行った際に、初期の強い痛みに加えて、弱いながら20分以上持続する痛み応答が存在することが判明した。昨年度までは「痛み」そのものの応答をall or noneでしか評価出来なかったことに比べると格段の進歩であり、痛みの質を解明できる段階になったことを示した。また、本手法を用いた脳機能の早期および晩期の脳機能傷害を評価する実験系を作成した。細胞内情報伝達系MAPKファミリーのJNKは脳組織におけるアポトーシスに強く関連することが知られている。また、記憶の一部にMAPKが関与することも知られている。このJNKを特異的に阻害し、細胞膜浸透を可能とするHIVのTAT蛋白質をフュージョンした阻害剤を用いて、マロン酸誘導脳虚血傷害を軽減する事がMRIを用いた解剖学的構造変化が無いことを証明した(研究発表参考)。次にこのモデルによる脳機能の機質的変化をfMRIにより解明する予定である。
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Neuroscience Letters 359(1-2)
ページ: 57-60