研究概要 |
活性型ビタミンD_3の主な生理作用はビタミンD受容体(VDR)との結合を引き金として発現する。代表者はVDRアンタゴニスト、25-dehydro-1α-hydroxyvitamin D_3-26,23-lactones(TEI-9647:2及びTEI-9648:3)の構造修飾を基盤とし、強力なVDRアンタゴニストの創製と作用発現メカニズムの解明に向け構造展開研究を進めた。 1:ラクトン環24位にC1〜C4のアルキル基を導入した誘導体を立体選択的に合成し、受容体親和性及びアンタゴニスト活性を評価した。その結果、生物活性はラクトン環上の置換基の大きさ、立体化学によって大きく影響を受けることが明らかになった。中でも(23S,24S)体は他の立体配置を持つ誘導体と比べ全体的に高い生物活性を示し、特にエチル基を導入した誘導体で最大となった。 2:上記の結果を基に24位に二つの置換基を持つ誘導体を設計し、最もシンプルな24,24-ジメチルビタミンD_3ラクトンを低原子価クロム錯体によるアリル化を利用して合成した。本化合物の生物活性評価を行なったところ、23S体のアンタゴニスト活性は2の約10倍となった。 3:2の結果を基盤としラクトン環のコンホメーションの生物活性への影響をさらに検討するべく24,24-エタノビタミンD_3ラクトン誘導体を設計した。spiro[4.2]骨格を有するラクトン環は、ルテニウム触媒によるエチレンとのエニンメタセシスと引き続くスルホキソニウムイリドの1,4-付加によるシクロプロパン化を利用することで効率的に構築した。合成した新規誘導体の生物活性評価を行なったところ、23S体の受容体親和性が天然ホルモンを凌駕する興味深い結果が得られた。アンタゴニスト活性は23S体が2よりも向上する一方、23R体は大幅に低下し、23位の立体化学の違いによって極端に異なることがわかった。
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