研究概要 |
平成15年度に引き続き,様々な求核剤を用いたパラジウム触媒アリル位アルキル化反応において,位置選択性とジアステレオ選択性を同時に制御し,三級四級連続不斉炭素中心の構築を行った,具体的には以下に示す結果を得た. 1.昨年度成功した位置及びジアステレオ選択的アリル位アルキル化反応において,昨年度用いたアリルエステルのエナンチオマーである(S)-2-acetoxy-4-ohenyl-3-buteneと2-methylacetoacetateとのパラジウム触媒アリル位アルキル化反応を行った.この際,昨年度と同様2-(diphenylphosphino)arylcarboxylic acidを配位子とした場合に反応が高い位置及びジアステレオ選択性で進行し,三級四級連続不斉炭素中心を有するアリル位アルキル化体を高立体選択的に得られた.また,そこで得られたカップリング生成物を6工程で抗腫瘍活性物質アセトマイシンの非天然体の合成に成功した. 2.反応に用いる求核剤として,昨年度までの2-methylacetoacetateに代えて,2-fluoroacetoacetate,2-benzylacetoacetate更にはethyl 3-oxo-3-phenylpropionateを用いた反応を行った.この場合にも配位子として2-(diphenylphosphino)arylcarboxylic acidが完全な位置選択性を示し,更には,それぞれが最高で79%,81%,93%という高いジアステレオ選択性を示す事を見出した. 3.求核剤として,グリシンエステル誘導体やアラニンエステル誘導体を用いた反応を行い,そこでも2-(diphenylphosphino)arylcarboxylic acidが高い位置及びジアステレオ選択性を示す事を明らかとした.具体的にはdiphenylimino glycinateあるいはdiphenylimino alaninateを求核剤とした場合,ほぼ完全な位置およびジアステレオ選択性でパラジウム触媒アリル位アルキル化が進行し,3級3級あるいは3級4級連続不斉炭素中心を有する新規アミノ酸誘導体の合成に成功した. 以上,パラジウム触媒アリル位アルキル化反応において,2-(diphenylphosphino)arylcarboxylic acidを配位子とすることで,求核剤のエノレート面の制御が可能であることを見出し,これまでに無い新たな三級四級連続不斉炭素中心の構築方法を確立した.
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