研究概要 |
がん抑制遺伝子産物であるp53はDNA損傷に応答して安定化し、活性化され細胞周期を制御する。この活性化過程でp53はMDM2,p14ARFを介して核小体においてSUMO化が増大される。またトポイソメラーゼI(Topo I)は転写、複製など、さまざまなDNA代謝に関与する酵素であり、カンプトテシン(CPT)などの抗癌剤の標的タンパク質として知られる。Topo Iは細胞内で核小体に局在しているが、CPT処理によりSUMO-2/3化され速やかに核小体以外の核内へ移行することが報告されている。さらにSUMO-2/3は環境ストレスに応答してその結合が変化することが報告されている。SUMO特異的プロテアーゼSMT3IP1は核小体に局在し、SUMO-2/3の結合した基質のみに作用することからp53とTopo IのDNA損傷に応答したSUMO化制御の一端を明らかにすることを目的として、SUMO特異的プロテアーゼSMT3IP1の活性制御機構の解析を行った。 SMT3IP1はin vitroにおいてSUMO-2化されたp53,Topo Iを基質としたが、in vivoではSUMO-2化されたp53は脱SUMO化できたが、SUMO-2化されたTopo Iは脱SUMO化できなかった。つぎにその特異的基質、活性制御タンパク質を明らかにする目的でSMT3IP1に結合する細胞内タンパク質を酵母Two-hybrid法により検索した。その結果、核膜孔複合体(NPC)タンパク質Nup50とこれを介してNPCと核内で結合しているmyosin-like protein (Mlp)を同定した。出芽酵母においてSUMO特異的プロテアーゼUlp1はNup60,Mlp1/2と結合し、制御されており、この脱制御によりDNA損傷ストレスに対して感受性が増大することが報告されていることから、哺乳動物細胞においても同様な制御機構が働いていることが考えられた。
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