研究概要 |
1.マウスCyp3a41遺伝子5'-隣接領域を用いたレポーター遺伝子アッセイ 昨年プロモーター活性が認められた-844bまでについてさらに解析した。その結果、C/EBP推定結合配列を含む-844〜-670領域が転写促進的に、CREB、AP1推定結合配列を含む-670〜-163領域が抑制的に働く事が明らかになった。しかし、その領域においては成長ホルモン(GH)、グルココルチコイド依存的調節が観察されず、調節領域は他の部位にあることが推測された。 2.マウスCyp3a41遺伝子5'-隣接領域の単離 NCBI核酸配列データーベース中のマウスCyp3a41遺伝子と思われる配列を基にプライマーを設計し、昨年度解析した-3.6kbまでよりさらに上流域の単離を試みた。マウス染色体DNAを鋳型として-11kb上流まで単離したが、基にした配列と完全に一致しないDNA断片しか増幅されなかった。これは、染色体中にCyp3a41と極めて相同性の高い配列が多数存在するためと推測された。最近、Cyp3a41に極めて高い相同性を有する遺伝子として、Cyp3a41A,Cyp3a44A,Cyp3a44Bという遺伝子の存在の可能性が示され、それらがCyp3a41遺伝子単離の障害になっていると考えられた。そこで、Cyp3a41遺伝子断片を有すると推測されるBACクローンを入手し、そのDNAからの増幅を行い、-11kb上流まで単離することが出来た。 3.マウス初代培養肝細胞におけるCyp3a41遺伝子のホルモンによる発現調節 マウス肝細胞初代培養系のレポーターアッセイ受容細胞としての評価を前年度に引き続き実施した。昨年度検討した合成グルココルチコイド(デキサメタゾン)に加え、天然型グルココルチコイドであるハイドロコルチゾン、コルチコステロンについて検討した結果、それらによっても濃度依存的な誘導、GHとの協調作用、抗グルココルチコイド(RU486)による阻害が観察された。グルココルチコイド単独作用と同様に、GHとグルココルチコイドによる協調的発現誘導においても、プレグナンX受容体ではなく、グルココルチコイド受容体(GR)が作用に関与していることが示された。誘導の経時変化及びタンパク質合成阻害剤を用いた検討より、グルココルチコイドによるCYP3A41mRNA発現誘導には、短寿命のタンパク質因子の新規合成が必要であることが示された。以上より、マウス肝細胞初代培養系においても、Cyp3a41遺伝子が生理的機構を反映した転写調節を受けている可能性が示され、レポーター遺伝子アッセイの受容細胞として有望であることが明らかとなった。
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