研究概要 |
細胞の極性の形成並びに維持における分子メカニズムの解明を目的とし、上皮細胞のトランスゴルジ網からbasolateral細胞膜への小胞輸送を制御するRab8分子の機能に着目した研究を行った。 上皮細胞の選別輸送におけるRab8分子の機能は培養細胞系で解析されてきたものの、種々の細胞の極性形成や、生理学的な重要性までは明確にされていない。本課題ではRab8a,Rab8b分子の遺伝子欠損マウス(KOマウス)を作製した。昨年度までにRab8a相同組換え遺伝子のホモ接合体であるgeo/geoマウス(簡易型KOマウス)が得られていた。簡易型KOマウスは、出生はするものの成長段階の早期に死亡する。現在までこのマウスの死亡原因の特定を試みてきたが、いまだ結論は得られていない。 次にgeo/geoマウスのネオマイシン耐性遺伝子などを、flp発現マウスとの交配により除去することで、Rab8a遺伝子座に2つのloxP配列をもち、Rab8aを正常に発現するfloxedマウスを得た。このfloxedマウスと全身でCre recombinaseを発現するマウスを交配させることでRab8aが全身で欠損する、完全型KOマウスが得られた。簡易型KOマウスと完全除去型KOマウスは表現型は同一であり、Rab8aの発現は両者とも検出されなかった。 更に現在は神経細胞、肝臓、膵臓などの組織に特異的にRab8aを欠損するKOマウスを得た。これらマウスの解析結果から出生後に死亡する表現型の原因となる臓器や細胞種を特定する。 Rab8a同様にRab8bのKOマウスの作製も進行しており、簡易型KOマウスがすでに得られた。これらのマウスの解析より2種のRab8遺伝子の生体内における役割がそれぞれ明らかに出来る。
|