研究概要 |
前年度に引き続き、ラット胚肝芽組織における諸分子の発現を検討した。 1.ラット12.5、13.5、14.5、15.5日胚および16.5日齢の胎児を用いて肝星細胞に関係する接着分子の発現を、免疫組織化学法を用いて検討した。肝芽細胞はαフェト蛋白質(AFP)およびサイトケラチン(CK)18を用いて同定し、間葉細胞はビメンチンを用いて同定した。従前より報告している神経細胞接着分子(NCAM)の発現に関して確認実験を行った。NCAMは成体の活性化星細胞に発現する分子で、4%PFA固定・2%PLP固定標本のラット肝芽組織間葉細胞に染色する(陽性対照としては線維化肝の標本を用い、陰性対照に染色が認められないことも確認した)ことを報告していたが、アセトン固定標本で染色が認められないことが判明し、複数の抗体を用いて再検討したところ、2%PLP固定標本およびアセトン固定標本の両者で染色が認められないことが確認された(陽性対照としては同一標本内の神経細胞を用いた)。当初の所見は残念ながら疑陽性であったと判断した。 2.ラット11.5日胚を用いて上皮間葉移行現象に関係する諸分子の発現を、免疫組織化学法を用いて検討した。Eカドヘリンは肝憩室を含む前腸内胚葉上皮細胞には強い染色として認められたが、横中隔内に存在するAFP陽性の肝芽細胞にはほとんど染色が認められなかった。基底膜成分を分解することが報告されているMMP2、MMP14の染色は肝憩室および横中隔内の細胞にはほとんど認められなかった。 3.NCAM発現に関して科学研究費奨励研究A課題番号10770009で行った研究成果と合わせて論文を作成していたが、1.の結果を受けて、課題番号10770009の結果を中心に編集し直して論文を投稿し受理された(Nakatani K, et al.,Archives of Histology and Cytology,in press)。
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