研究概要 |
前年度、CalB細胞が光刺激を体内時計機構に伝達するゲート細胞であることをCalBアンチセンスオリゴを用いた実験から明らかとした(Hamada et al.,J.Neurosci,2003)。CalB蛋白の細胞内、核の局在にサーカディアンリズムがあり、昼低く、夜に高いというリズムを示すことを発見した。さらにCalBアンチセンスオリゴを投与することにより、夜間の光刺激が引き起こす体内時計を動かす機構を抑制し、逆に体内時計を動かすことができない昼間の光刺激により、体内時計を動かすことを明らかとし、CalB細胞が光情報を選択的に体内時計機構に伝えていることを明らかとした。今年度、光情報はCalB細胞から通常、時計遺伝子がリズミックに発現しているVP領域のごく限られたところに伝達すること、そしてその領域から遅い速度で規則正しく周辺の細胞群に情報を伝達していくことを明らかとした(Hamada et al.,Eur.J.Neurosci,2004)。さらに時計遺伝子がリズミックに発現しているVP領域の時計遺伝子をアンチセンスオリゴを用いて、発現量を減少させると、アンチセンスオリゴを投与した時刻に依存して、行動のサーカディアンリズムの位相を変化させることができることを発見した(Hamada et al.Neurosci.Lett.,2004)。またVP領域に発現していると考えられるClock遺伝子にミューテーションが入ったClockミュータントマウスは約28時間周期で活動し、24時間よりもより長い外界明暗周期に自身の時計を同調できることを明らかとした(Udo et al.BBRC,2004)。以上の結果はVP領域の細胞群は体全体の活動リズムを制御できる細胞群であり、その領域の時計遺伝子の発現周期を変化させることでより長い外界明暗環境に自分の体の活動リズムを適応させることができることを示唆するものである。
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