研究概要 |
私はこれまでにラット腎臓の集合管及び腸管上皮に高発現する新規膜型セリンプロテアーゼ遺伝子(TMSP-1)の単離に成功し、リコンビナント蛋白の酵素学的性状を明らかにした。更に、本酵素がグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型蛋白質として細胞膜上に局在し、上皮型ナトリウムチャンネルを活性化、その遺伝子発現が上皮型ナトリウムチャンネルと同じくアルドステロンによって制御されることを明らかにし、ナトリウム輸送の制御分子として重要な役割を果たすことを報告した(Okumura et al. Biol.Chem.vol.384,1483-1495,2003)。次に、昨年度に引き続き、酵素によるナトリウムチャンネル活性化のメカニズムが、チャンネル分子が酵素による限定分解を受けて活性化するのか、あるいは酵素と結合し活性化するのかという点に基づき、上皮型ナトリウムチャンネルを構成する各サブユニット遺伝子(α,β,γ)を単離、酵素の作用部位と考えられる細胞外ドメインと、TMSP-1遺伝子との共発現により、各サブユニットが限定分解を受けるか否かについて検討した。結果、αまたはγサブユニットとの共発現において、TMSP-1およびサブユニット蛋白の発現量自体には変化が認められないものの、TMSP-1の酵素活性が有意に低下したことから、両分子の結合がナトリウムチャンネル活性化に関与する可能性が示唆された。しかしながら、チャンネルの活性化はTMSP-1の活性中心に対する変異ミュータントでは認められず、TMSP-1が酵素活性を有する構造であることの重要性が示唆された。また、αおよびγサブユニットは、一部にセリンプロテアーゼインヒビターの活性中心と類似したアミノ酸配列を有しており、現在はその部位の変異ミュータントとTMSP-1との反応性を解析することで、両分子の構造上の作用部位同定を進めている。
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