研究概要 |
Angioimmunoblastic lymphoma(AILD-T)はEBウイルスが関与しているとされるT細胞性リンパ腫瘍であるが、多彩な臨床症状を呈し反応性病変からの連続的移行が示唆されている。病理組織学的にも腫瘍細胞以外の細胞が混在し、腫瘍細胞の同定が困難である。EBウイルスの腫瘍細胞への感染や腫瘍化への関与についての詳細は未だ明らかでない。我々は4例のAILD-Tについてsingle cell PCR法を用いてTCRγ遺伝子の解析を行った。まず、EBER in situ hybridizationを行いEB陽性細胞を同定し、実体顕微鏡下で一個ずつ細胞を採取した。これを鋳型としてseminested PCR法にて再構成されたTCRγ遺伝子、免疫グロブリン遺伝子及びコントロールとしてβアクチン遺伝子を増幅した。PCR産物をTAクローニングし、塩基配列の解析を行った。また、EBER以外にCD3,CD4,CD8陽性細胞についてTCRγの再構成を中心に同様の方法で解析した。結果として、AILD-TにおけるEBウイルス陽性細胞の20%程度がTCRγ遺伝子の再構成を示し、免疫グロブリン遺伝子再構成は2%程度に認められ、AILDではEBウイルスはT細胞、、B細胞両者に存在することが明らかとなった。ClonalityはTCRγのみで認められ、免疫グロブリン遺伝子はpolyclonalであった。興味深いことに、一部の症例では腫瘍細胞ごとにTCRγのV領域、J領域の塩基配列が一致しており、N領域のみが異なっていた。AILD-TはCD4陽性のT細胞性腫瘍であることが知られているが、CD4,CD8陽性細胞について調べると、CD4陽性細胞でのみclonalityが確認された。ただしCD8陽性細胞でもV, J領域のファミリーが類似しており、何らかの共通抗原の存在が示唆された。
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