研究概要 |
本研究では免疫グロブリン重鎖領域に重点をおき,B細胞性悪性リンパ腫と組織学的に確定された症例での,免疫グロブリン領域によるサザンブロット法,PCR法による陽性率とその組み合わせ,腫瘍組織型(濾胞性リンパ腫やび漫性大細胞型など)での陽性率,転座に関連したPCR法の有用性を検討した。 症例としてはパラフィン切片および凍結材料よりの抽出DNAが利用出来た節性リンパ節症例(約40例)を中心に,反応性病変,一部節外性のものを加えた。 免疫グロブリン遺伝子領域のPCR法によるmonoclonarityの検討では,重鎖のFr2a-LJH, Fr2a-VLJHによる2ステップPCRが再現性を含め比較的安定していた。陰性例については一部は固定材料におけるDNAの保存の問題と考えられたが,同様の条件を未固定材料からの抽出DNAに適用した場合むしろ非特異バンドの出現など判定の問題が生じた。組織型での明らかな陽性率の差はみられなかった。 PCRによる(14;18)転座の検討では,濾胞性リンパ腫において,未固定材料抽出DNAを用いたlong distance PCR法で,主に2種類のプライマーペアの設定により,約2/3と比較的高率に(14;18)転座が確認出来た。パラフィン材料でのMBR及びmcr領域に対する通常のPCRでの陽性率は4割台で,材料の状態とともに,短い領域でのプライマー設定や切断点の多様性の関与が考えられた。 サザン法陽性,PCR法陰性となった症例で,重鎖領域を用いたinverse PCR法による検討を追加し,一部の症例ではサザン法のバンドに対応するPCRの増幅バンドが確認出来たが,手技的な問題もあり期間中この産物の解析に至らなかった。
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